がん保険とは

監修ファイナンシャルプランナーさん:中野令子さん
現在2児の母。短大卒業後、出産前までは大手証券会社で長年営業に従事。個人や法人の顧客向けに資産運用商品や保険などの金融商品を販売。現在は自営業の夫の仕事を手伝う傍ら、自身の経験を活かし、ウェブライターとして活動中。わかりやすいをモットーに、身近にあるお金について解説します。1級FP技能士。
人ががんにかかるリスクやがん治療入院にかかる医療費等について、がん保険を念頭に置きつつ、以下で詳しくご紹介します。
2人に1人ががんにかかると言われる現代、たとえ今は健康体であったとしても、決してがんは他人ごとではありません。将来、もしがんに罹患してしまった場合には、病気や治療のことだけではなく、費用のことも大きな問題としてのしかかるでしょう。
3大疾病の中でも、特に罹患リスクの高いがん。近年、がん保険はますます注目されています。
がんにかかるリスク
国立がん研究センターの統計・報告によると、一生涯のうちに日本人が何らかのがんにかかる確率は、男性が63%で女性が47%。この数字の見方には一部注意が必要なところがあるものの、よく言われる「2人に1人はがんになる」という俗説は、大きく誤った話ではないようです。
以下、同センターが公表している情報をもとに、「がんにかかるリスク」を男女別・年齢別で見てみましょう。
男性ががんにかかるリスク
現在年齢 | 20歳 | 30歳 | 40歳 | 50歳 | 60歳 |
---|---|---|---|---|---|
10年後 | 0.3% | 0.6% | 2% | 6% | 16% |
20年後 | 0.8% | 2% | 7% | 20% | 39% |
30年後 | 2% | 8% | 21% | 41% | - |
40年後 | 8% | 21% | 42% | - | - |
50年後 | 21% | 42% | - | - | - |
60年後 | 42% | - | - | - | - |
生涯 | 63% | 63% | 63% | 64% | 63% |
女性ががんにかかるリスク
現在年齢 | 20歳 | 30歳 | 40歳 | 50歳 | 60歳 |
---|---|---|---|---|---|
10年後 | 0.4% | 1% | 4% | 6% | 9% |
20年後 | 2% | 5% | 9% | 14% | 21% |
30年後 | 5% | 10% | 17% | 25% | - |
40年後 | 11% | 18% | 28% | - | - |
50年後 | 18% | 29% | - | - | - |
60年後 | 29% | - | - | - | - |
生涯 | 47% | 47% | 46% | 44% | 41% |
これらの数字を見れば、年齢が上がれば上がるほど、がんに罹患する確率も上がることが分かります。
がん治療入院の医療費
3割負担の健康保険に加入している場合、がんの入院にかかる総費用は、おおむね「15,000~17,000円×入院日数」。また日本では、1ヶ月間における医療費の自己負担限度額を設定する「高額療養費制度」が敷かれているため、最終的な自己負担額は90,000円以下になることが多いようです。
以下、がんの入院にかかる費用の目安について、がんの種類ごとに確認してみましょう。
がんの種類ごとの入院費用の目安
がんの種類 | 平均入院日数 | 3割負担の場合 | 高額療養費制度を利用した場合 | |
---|---|---|---|---|
1日あたりの費用 | 支払い総額 | |||
胃がん | 19.3日 | 15,100円 | 290,700円 | 87,100円 |
大腸がん | 16.1日 | 16,200円 | 261,300円 | 86,100円 |
肺がん | 17.6日 | 15,800円 | 278,300円 | 86,700円 |
肝がん | 17.4日 | 15,300円 | 265,700円 | 86,300円 |
乳がん | 12.1日 | 17,700円 | 213,800円 | 84,600円 |
子宮がん | 11.9日 | 16,800円 | 200,300円 | 84,100円 |
前立腺がん | 17.6日 | 15,000円 | 264,000円 | 86,200円 |
健康保険や高額療養費が適用されない費用
上の表をご覧いただいて分かるとおり、国民皆保険を前提とする日本の医療保険制度のもとでは、アメリカとは違って「がん治療の費用で破産した」「お金を用意できないので、がん治療を受けることができない」といったことは、一般にありません。
たとえば、本来であれば90万円ほどかかる胃がんの入院治療について、3割負担で自己負担額30万円弱、さらに高額療養費制度を利用して自己負担額9万円弱。決して用意できない金額ではないでしょう。
ただし、その一方で、健康保険や高額療養費制度が適用されない費用もあることを理解しておかなければなりません。具体的には、差額ベッド代、先進医療の受診代などです。入院中に収入が減少してしまうことがあれば、その減少分も費用の一種と考えるべきでしょう。
これら別途での費用を加算すると、がん治療にかかる費用は、決して安いものとは言えないのが現状です。
まとめ
以上、人ががんにかかる確率、および、がん治療にかかる入院費の目安について確認をしました。
がん治療にかかる費用の中には、健康保険や高額療養費では賄えない性質のものがあることをご紹介しました。また、がんは、いわゆる3大疾病の中でも罹患するリスクの高い病気であり、2人に1人ががんになるという統計もご紹介しました。
若いうちにがんに罹患するリスクは極めて低めですが、年齢を重ねるにつれて、これらがんや治療費に関することは身近な問題となっていきます。約半数の人が直面する現実であることを理解しておきましょう。それら「がん」という現実に対する具体的な備えこそが、すなわち「がん保険」ということです。